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GPUドライバを更新したらPCやゲームが不調に?スッキリさせる「DDU」の使い方

(写真はイメージです)

 新しいビデオカードに挿し替えたら、なぜか画面が点滅したりマルチディスプレイの表示がおかしくなった。あるいはベンチマークテストや実際にゲームをプレイしても、本来発揮されるはずの性能に届かないことがある。もしくは、ドライバをアップデートしただけなのに、ゲームが不調になった。こんな経験があるユーザーは少なくないだろう。

 そんな時に検討したいのが、今回紹介する「Display Driver Uninstaller」(以下DDU)である。

 このDDUは、NVIDIAやAMD、Intelのディスプレイドライバなどに関するファイルを完璧に削除し、トラブルの原因を根本から解消するツールだ。今回はこのDDUの機能を紹介した上で、必要な準備作業と削除に関する実際の作業を1つ1つ手順を追って解説していく。

チップメーカーが異なるビデオカードの換装は要注意

 ビデオカードは映像出力をになう重要なパーツだけに、そのデバイスドライバやユーティリティは、OSと深いところで結び付いている。そのため新しいパーツに交換する際に、トラブルが発生することは珍しいことではない。特にNVIDIAからAMD、AMDからNVIDIAといったチップメーカーが異なる乗り換えを行なう際には、トラブルが起きる可能性は高くなる。

 具体的には画面が突然消灯したり点滅したり、マルチディスプレイで使っていた場合には1画面しか表示されなくなったりと、症状はさまざまだ。ビデオカードの性能が低下したり、ゲームが起動しなくなったりすることもあるようだ。

筆者の事務所ではマルチディスプレイ環境を構築しており、ビデオカード交換のタイミングでいろいろよく分からないトラブルが生じることはあった

 筆者もこうしたマルチディスプレイの症状や、画面がチラチラと点滅を繰り返すトラブルを経験している。その時は「いったん元のビデオカードに戻して」、「ドライバやユーティリティをアンインストールしてから」ビデオカードを換装することで、トラブルが解決した。そうした状況を思い返すと、やはりチップメーカーが異なるビデオカードを換装した時のトラブルだった。

 ただWindowsのアンインストールツールだけだと、そうしたドライバやユーティリティは完全に削除されるわけではない。残ってしまった残骸のファイルや設定が、何かしら悪さをするということも可能性としては存在する。

 DDUを利用すれば、そうしたファイルの残骸も残さず削除し、そのビデオカードを利用する前の状態に戻せる。DDUは提供しているWagnardsoftのWebサイトからダウンロードできるので、まずはその手順を紹介する。

WagnardsoftのWebサイトで[Our Softwares]の横にある[Display Driver Uninstaller]のボタンをクリックする
するとDisplay Driver Uninstallerの概要を紹介するページに移行するので、スクロールして[Click here for DOWNLOAD & SUPPORT]という文字をクリックする
ダウンロードページに移行して、さらにスクロールするとDDUをダウンロードするハイパーリンクがある。今回はインストール版を使うので[Download DDU installer]をクリックする
最新版DDUのセットアップファイルがダウンロードされるので、これをインストールする。インストール方法はほかのアプリと同じ

 またDDUでデバイスドライバやユーティリティを完全にアンインストールする前に、いくつかやっておいたほうがよいこともある。まずはパーツメーカー固有のユーティリティをアンインストールしよう。新旧ビデオカードのパーツメーカーが異なるなら、当然これもトラブルの原因になる。

 また、万が一DDUを実行することで何かトラブルが発生した時に備えて、市販ソフトでシステムをバックアップしたり、Windows 11の復元ポイントを手動で作成しておくのもよいだろう。復元ポイントは、システムに重要な変更を加える前の状態を保存しておき、状況に応じて保存した状態に書き戻すという機能だ。備えは万全にしておきたい。

検索窓で[復元ポイント]と入力し、一番上にある[復元ポイントの作成]をクリックする
[保護設定]にあるシステムドライブをクリックし、一番下にある[作成]ボタンをクリックする
すると復元ポイントの説明文の入力画面になる。復元ポイントのタイミングを想起させるテキストを入力して[作成]ボタンをクリックする
すると10秒くらいで復元ポイントが作例される

サインイン方法とアカウントの種類によって準備作業は変わる

 DDUを実行する前に、普段Windows 11にサインインしているアカウントの状況を確認しよう。と言うのもDDUは基本的にセーフモードで利用するアプリなのだが、サインインしているアカウントの状況によってはセーフモードを利用できない。現状でどのようなサインインアカウントを使っているかで、準備作業が変わる。

【1】ローカルアカウントでサインイン

 この場合は何もする必要がない。【2】と【3】に関する作業は行なわず、セーフモードの起動からDDUによるアンインストール作業に進もう。

【2】パスワードありのMicrosoftアカウントでサインイン

 PINや指紋認証、顔認証といったWindows Helloの認証機能はセーフモードのサインインには利用できないため、DDUも利用できない。設定アプリからWindows Helloによる認証を無効にすると、Microsoftアカウントとパスワードを使ってセーフモードのWindows 11にサインインできる。

Windows Helloの認証が有効の状態だと、セーフモードのWindows 11にサインインできない
Windows 11の設定アプリから[アカウント]→[サインイン オプション]とたどり、[追加の設定]の一番上にある[セキュリティ向上のため、このデバイスでは~]をオフにする
先ほどのサインイン画面に[サインインオプション]が追加されるのでこれをクリック
セーフモードではPIN(右の電卓アイコン)は利用できないので、左の鍵アイコンをクリックしてパスワード入力用のダイアログを表示する
表示されるダイアログにパスワードを入力する
セーフモードのWindows 11にサインインし、DDUを利用できる状態になる

【3】パスワードなしのMicrosoftアカウントでサインイン

 2と同じ理由でセーフモードにサインインできないのだが、こちらではそもそもパスワードも存在しない。そのため2で変更した設定項目を変更しても、その変更が有効にならない。

 そのため現在サインインしているMicrosoftアカウントを、ローカルアカウントに切り換えて作業を進めよう。ビデオカードの変更が終わったら、Microsoftアカウントでのサインインに戻すのを忘れずに。

設定アプリの[アカウント]をスクロールして[ユーザーの情報]をクリックする
[アカウントの設定]にある[ローカルアカウントでのサインインに切り換える]をクリックする
切り換えウィザードが開始されるので、[次へ]ボタンをクリックしてまずは現在のMicrosoftアカウントの認証を行なう
現在利用しているサインインアカウントのPINを入力する
するとローカルアカウントの作成画面が表示される。ユーザー名とパスワード、パスワードのヒントを入力して[次へ]をクリックする
これでローカルアカウントへの切り換えは終了。[サインアウトと完了]をクリックすると、現在サインインしているMicrosoftアカウントからサインアウトしてロック画面が表示される
サインイン画面を表示し、先ほどのアカウントとパスワードを使ってサインインしよう

セーフモードで起動し、DDUを使ってアンインストール

 アカウントの状態を確認したら、セーフモードで起動して作業を開始しよう。セーフモードへの入り方はいろいろあるが、今回は確実に入る方法として設定アプリからセーフモードを起動してみる。

設定アプリの[Windows Update]にある[詳細オプション]をクリックする
[追加オプション]にある[回復]をクリックする
[回復オプション]にある[今すぐ再起動]をクリックして再起動する
再起動して表示されるこの画面で[トラブルシューティング]をクリックする
[詳細オプション]をクリックする
[スタートアップ設定]をクリックする
[再起動]ボタンをクリックする
再起動後にこの画面になるので数字キーの4を押すと、Windows 11がセーフモードで起動する
再起動して表示されるサインイン画面では、先ほどアカウントの準備で紹介した通り[サインインオプション]をクリックする
パスワード入力をしたいので鍵のマークをクリックする
先ほど設定したパスワードを入力してEnterキーを押す
Windows 11がセーフモードで起動した

 DDUの作業自体は簡単だ。DDUを起動してアンインストールしたいチップメーカーを選択するだけでよい。作業が終わったらシャットダウンしてビデオカードを交換し、PCを起動して新しいデバイスドライバなどをインストールしていく。

DDUを起動して、[デバイスタイプを選択]のプルダウンメニューをクリックし、削除したいデバイスのタイプを選ぶ。今回は[GPU](ビデオカード)を選択する
さらに[デバイスを選択]から、削除したいデバイスのメーカー名を選択する。ここではNVIDIAのビデオカードに関するファイルを削除するので[NVIDIA]を選択しよう
[オプション]をクリックすると、DDUでどのような作業を行なうかを確認できる。初期設定では[Physicsを削除する]にチェックが入っていないので、チェックを追加して[×]をクリック
DDUの背景がNVIDIAのコーポレートカラーであるグリーンに変わっていることを確認して、[削除とシャットダウン]ボタンをクリックする
ちなみに[デバイスの選択]を[AMD]にすると、背景のカラーがAMDのコーポレートカラーの赤っぽい色に変わる
作業内容は[ログ]ウィンドウに表示される。一通り作業が終わると自動でシャットダウンする
PCがシャットダウンしたことを確認して電源ケーブルを抜き、新しいビデオカードを挿す
PCを起動して新しいビデオカード用のデバイスドライバなどをインストールする。これで作業は終わり

 設定アプリの[アプリ]から[インストールされているアプリ]で、NVIDIA関連のアプリが正しく削除されているかどうかを確認してみた。左はDDUによるアンインストール前で、右がアンインストール後だ。画像を見れば分かる通り、NVIDIA関係のアプリがきれいさっぱり消えていることが分かる。

DDUで削除する前(左)と削除した後(右)のアプリの様子。NVIDIA関係のアプリはきちんと削除されている

新しいビデオカードはスッキリきれいな環境で迎えよう

 DDUはセーフモードで利用するアプリなので、今まで見てきた通りその準備にやや手間がかかる部分はある。しかしDDUでシステムをクリーニングしておけば、トラブルが発生する可能性を減らせるし、性能が低下したりトラブルが発生した時の原因を究明しやすくなる。ビデオカードや各パーツを交換したり強化しながら長くPCを使う自作PCユーザーなら、ぜひ使いこなしたいアプリの1つだ。