配信修行僧

OBSのバックアップの取り方と注意点。Elgatoの新ソフトを使った裏技も紹介

 WordやExcelなどと違い、OBSには「ファイルの保存」という概念がない。適用した変更は常にリアルタイムで保存されているからだ。ただ、そういった仕様上、OBSの各種設定をバックアップする方法が分からない、あるいはそもそもバックアップしようとすら思っていない人もいるだろう。

 しかし、何かの弾みに昨日までいつも通り起動していたOBSの設定が初期化されてしまったという事態が発生することもある。筆者のようにシーンが数十個もあるような人でなくても、マイク周りなど意外と細かい調整をしていたりするもので、設定が飛ぶと元に戻すのに苦労することは十分にありうるのだ。

 というわけで、不測の事態に備えて、OBSの設定をバックアップする方法を解説する。基本的には方法自体は簡単であり、新規に購入したマシンへ環境を移行する際などにも役立つはずなので、ぜひ参考にしてもらいたい。

プロファイルの保存

 実はOBSの設定のバックアップと一口に言っても、対象となるものは複数ある。その1つがプロファイルだ。プロファイルはOBSでの「ファイル」→「設定」で開かれるウィンドウの内容で、接続サーバーや、ホットキー、配信解像度、エンコーダの設定などの設定が含まれる。

OBSの「ファイル」→「設定」の内容は、プロファイルとして保存されている

 プロファイルはデフォルトでメニューの「プロファイル」に「無題」として保存されている。「プロファイル」の「エクスポート」を選ぶと、任意のフォルダにプロファイルを保存できる。

 これだけでもいいが、OBSに限らずバックアップデータは分かりやすい名前を付けた方が管理しやすい。「プロファイル」→「名前を変更」でプロファイルの名前を変更できる。

 直接バックアップとは関係ないが、プロファイルは「新規」や「複製」を押して、複数作ることができる。これにより、YouTube用とTwitch用でプロファイルを分けておき切り替えることで、片方はフルHDでもう片方は4Kで配信と言ったことが簡単にできるようになる。

プロファイルは「プロファイル」に「無題」として保存されている。「エクスポート」を選ぶと、任意のフォルダに保存できる

シーンコレクションの保存

 OBSをバックアップする上で一番重要な対象は、シーン構成だろう。筆者の場合、シーンは30個近くあり、シーンによってはソースも数十個ある。また、1つのソースやシーンに対してフィルタを数十個利用しているものもある。こういった複雑な構成を一から作り直すのは困難を極めるので、定期的にバックアップを取るようにしている。

 これらのシーン構成は「シーンコレクション」として扱われる。バックアップの取り方はプロファイルの場合と同じで、「シーンコレクション」→「エクスポート」でバックアップ先のフォルダを指定するだけだ。デフォルトだと名前が「無題」になるのも同じで、こちらも「名前を変更」から分かりやすい名前にした方がいい。

「シーンコレクション」→「エクスポート」でシーンコレクションも定期的にバックアップしよう

 なお、シーンコレクションは、どのシーンにどのソースが配置されているかなどを記録しているが、たとえば画像や音声などの外部ファイルそのものは含まれていない。新しいマシンにOBS環境を移行する際は、シーンコレクションに加えて、メディアファイルなどもコピーする必要があるし、いざという時に備えて定期的にバックアップしておきたい。

 OBSを新環境に移行する場合、基本的には古い環境と新しい環境とで、メディアファイルの保存場所が同じである必要がある。たとえば、旧環境でドキュメントフォルダ配下のOBSという名前のフォルダに保存してあるなら、新環境でもドキュメントフォルダ配下にOBSフォルダを作り、メディアファイルをコピーするという具合だ。

 ただ、OBSには行方不明になったメディアファイルの保存場所を指定する機能があるので、これを利用すれば新旧環境でメディアファイルの保存場所(フォルダ名)が違っていても楽に移行できる。

 具体的には、OBS起動時にメディアファイルがみつからないと、その旨を伝えるダイアログが表示されるので、「ディレクトリを検索」ボタンを押して新しい保存場所を指定すればいい。1つのフォルダにメディアファイルがまとまっているなら、複数ファイルがある場合もメディアファイルを1つだけ指定すれば自動的にほかのファイルも探し出してくれるので便利だ。

メディアファイルは保存場所が変わると、OBSの起動時にエラーが出る
ここで「ディレクトリを検索」ボタンを押して新しい保存場所を指定すればエラーは消える

OBSの現在の設定内容はAppDataに保存される

 冒頭で、OBSでは適用した変更は常にリアルタイムで保存されていると書いた。そのデータを直接バックアップするという方法もある。OBSの現在のプロファイルとシーンコレクションの設定内容は、%UserProfile%\AppData\Roaming\obs-studio\basic 配下に保存されている。AppDataフォルダはOSの標準設定で非表示となっているが、OBSで「ファイル」→「設定フォルダを開く」を選ぶと、%UserProfile%\AppData\Roaming\obs-studio がエクスプローラーで開かれる。

 ここに常に最新の内容が保存されるので、わざわざプロファイルやシーンコレクションでエクスポートして設定をバックアップしなくてもいいのではと思うかもしれない。しかし、操作ミスや何かの弾みでOBSのプロファイルやシーンコレクションがおかしくなることもある。OBSには、Ctrl+Zで操作を元に戻す機能が追加されたが、OBSを終了すると元には戻せない。

 筆者のオススメは、%UserProfile%\AppData\Roaming\obs-studio\basic 配下のフォルダを常にバックアップしておきながら、ある程度の変更を加えた時は、プロファイル&シーンコレクションもエクスポートしてバックアップしておくという運用方法だ。

プラグインのバックアップについて

 OBSで少し凝ったことをやっている人は、バックアップについてもう1つ気にかけることがある。それはプラグインのバックアップだ。と言っても、プラグインについては基本的にいつでも公開元からダウンロードできるので、バックアップするというより、自分がどのプラグインをインストールしているかを管理/把握しておけば運用上問題ないだろう。

 インストールしているプラグインについては、「ヘルプ」→「ログファイル」→「現在のログファイルをアップロード」を選び、次のウィンドウで「分析」を押し、表示されるサイトで確認できる。これは、OBSに関係したOSの各種設定を含むログファイルを公式サイトにアップロードし、推奨される設定になっているかを確認できる機能だ。

 このページでは、下の方に「Third-Party Plugins」の欄があり、ここに自分がインストールしたプラグインの一覧が表示される。この情報を控えておいて、マシン移行の際は新環境に必要なプラグインをダウンロード、インストールすればいい。

筆者がアップロードしたログの分析結果。サードパーティプラグインは48個もインストールしている

 この方法が面倒だという人は、プラグインがインストールされたフォルダをまるごとバックアップしておくという方法もある。OBSのプラグインは、OBSのインストールフォルダ(デフォルトだとC:\Program Files\obs-studio)配下にある、bin、data、obs-pluginsというフォルダにインストールされている。

 プラグイン本体はこの内のobs-pluginsフォルダに保存されているのだが、プラグインそれぞれに関連する設定ファイルなどはbinフォルダやdataフォルダにも保存されるので、この2つのフォルダも合わせてバックアップした方がいいだろう。

 ただ、obs-pluginsフォルダにはOBS標準のプラグインも保存されている。古いPCに入っているOBSが古いバージョンで、新しいPCには新しいバージョンのOBSが入っている場合、古いPCでobs-pluginsフォルダをバックアップして、それをまるごと新しいマシンにコピーすると、標準プラグインが本来のバージョンではなくなってしまう可能性がある。

 そのため、プラグインをバックアップした場合は、先の方法でどのプラグインを使っているかを確認だけしておき、新規PCには改めて個別にダウンロード、インストールする方が、時間はかかるが無用なトラブルを避けられるだろう。

Elgatoの「Marketplace Connect for OBS」でプラグインやアセットごとバックアップ

 もう1つ、ちょっと変わったバックアップ方法的なものを紹介しよう。Stream Deckで有名なElgatoは、「Marketplace Connect for OBS」というソフトを先日公開した。このソフトを使うと、ひな形から簡単にOBSのシーンを構築できるようになる。

 OBSのシーンコレクションのひな形として使える素材集はいろいろなところが提供している。Elgatoも独自のマーケットプレイスでそいういった素材集を提供開始したのだが、Marketplace Connect for OBSを使うと、ワンクリックで素材をダウンロードし、その後も、チュートリアルに従ってカメラやマイクを指定するだけの簡単操作で、洗練されたシーンコレクションが完成する仕組みになっている。

 一般ユーザーとしては、この「素材の入手」がMarketplace Connect for OBSの主な目的となるのだが、このソフトの機能を使うと、シーンコレクションに加え、メディアファイルなどのアセットやプラグインまでも一括バックアップができるようになるのだ。

 やり方を説明する。まずはMarketplace Connect for OBSをElgatoのサイトからダウンロードして、インストールする。

 OBSを起動し「ツール」→「Elgato Marketplace Connect」を開く。Marketplace Connectのウィンドウの歯車アイコンを押し、「Turn on maker tools」にチェックを入れ「Save」する。

Marketplace Connect for OBS
上の画面で歯車アイコンを押し、「Turn on maker tools」にチェックを入れ「Save」する

 OBSを再起動すると「ツール」に「Export Maker Scene Collection」と「Import Maker Scene Collection」が追加されている。Export Maker Scene Collectionは、現在のシーンコレクションをパッケージ化してMarketplaceで公開するためのツールだ。

 最初の画面には自分が使用している画像や音声などのアセット一覧が表示される。「Continue」を押すと、自分が使っているカメラデバイス一覧が表示されるので、それぞれに名前を付け「Continue」を押す。最後にこのシーンコレクションに必要なプラグインを選択して「Continue」を押すと、パッケージ化が始まる。

 このツールは、シーンコレクションの保存と違って、メディアファイルなどのアセット、そして使っているプラグインまでをパッケージとして保存できる。このパッケージをバックアップファイルとして保存しておき、マシンを移行する時は、新マシンでImport Maker Scene Collectionを選べば元の環境に戻せるというわけだ。

Exportすると、まず自分が使っているアセットの一覧が表示
次に使っている映像/カメラデバイスに名前を付ける
一緒にパッケージ化するプラグインも選べる

 非常に簡単で強力なツールなのだが、問題点もある。1つは、Export時に最後に出るプラグインの選択画面にすべてのプラグインが出ないこと。筆者は48個のサードパーティプラグインをインストールしているのだが、Export時に表示されたのは16個だけだった。48個の中には実際のシーンで使っていないものもあるので、それも原因だと思うが、シーンで使っているプラグインでも表示されないものがあった。

 もう1つの問題は、筆者の環境だとアセットやプラグインが多すぎるためか、Exportを実行して3時間待ってもExportが終了しなかった。シーンが2つしかない、別のマシンでは瞬時にExportが終わり、Importすると元の環境を復元できたので、環境によってはうまく動作しないことがあるようだ。

筆者のメイン配信環境だとこの画面のまま3時間たってもパッケージ化が終わらなかったが、サブ環境ではうまくいった

 もう1つ、これは問題というより仕様なのだが、Importしたアセットは%UserProfile%\AppData\LocalElgato\MarketplaceConnect\SceneCollectionというフォルダに展開される。そのため、以前の環境ではピクチャフォルダに保存していたつもりの配信用画像が違う場所に移動していて戸惑うことがあるだろう。

 また、OBSだけで運用しているのならこれでもいいのだが、Streamer.botなどの外部ツールも使っている場合、アセットの保存場所が移動したことで、たとえば配信で使っている音声ファイルを再生できない(あるいは逐一保存場所を指定し直す)などの問題が発生する。

 こういった制約があるため、OBSを使いこなしている上級者向けではないのだが、小難しいことをせずに簡易的にバックアップ/移行したいという人は使ってみるのもありだろう。