イベントレポート
変態のデュアルIntel Arc Pro B60カードから、Stream Deckの“モジュールだけ”まで~COMPUTEX注目製品総まとめ
2025年6月6日 11:10
COMPUTEX TAIPEI 2025の会期終了からだいぶ間が空いてしまったが、この記事では会場で見かけたユニークな製品たちをゆっくり紹介してまとめとしたい。なお、メーカー(もしくは展示名)はアルファベット順に並べてある。
- あのメーカーとコラボしたゲーム端末を展示したAntec
- USB4やPCIeコントローラで注目集まるASMedia
- Stream Deckの“モジュールだけ”を展示したElgato(コルセア)
- 新型SSDやmicroSDカードを展示したKIOXIA
- 注目のデュアルIntel B60の基板が拝めるMAXSUN
- コラボマウスも展開のNoctua
- Phisonも発熱を抑えたPCIe 5.0対応SSDコントローラ投入
- 3,300W電源を展示したSUPER FLOWER
- ハイエンドSSDコントローラを低発熱で成功したSilicon Motion、今度はメインストリーム向け
- Nintendo Switch2向けmicroSD Expressカードの展示
- 水冷ミニPCなどを展示したThermalright
- ジム・ケラー氏率いるtenstorrentもブース出展
- Thermaltake、4面ディスプレイ搭載水冷クーラー
- COMPUTEX TAIPEI 2025振り返り
あのメーカーとコラボしたゲーム端末を展示したAntec
Antecブースには、AntecとAYANEOがパートナーシップを結んで販売しているポータブルゲーミングPCの「Antec Core HS」の最新モデルが展示されていた。
展示されていたAntec Core HSの最新モデルは、ベースモデルとなる「AYANEO SLIDE」と比較してCPUがRyzen 7 7840UからRyzen 7 8840Uにアップグレードされている。ただし、CPUとしての性能は大きくは変わらずNPUの性能が向上しているのがポイントか。
また、Antec版「AYANEO POCKET MICRO」として開発された「Antec CORE MICRO」も展示されていた。SoCにMediaTek Helio G99を搭載するなど、基本的なスペックは共通だ。
USB4やPCIeコントローラで注目集まるASMedia
ASMediaは、新開発のPCIe Packet Switchソリューション「ASM58048」と、USB4デバイスコントローラ「ASM2464PDX」を展示していた。
ASM2464PDX
今回リリースされたASM2464PDXは、既存のUSB4対応デバイスコントローラ「ASM2464PD」の拡張モデルである。ASM2464PDは主にNVMe SSD向けの1チップソリューションだったが、ASM2464PDXはNVMe SSDに限らず、汎用のPCIeデバイスをサポート。さらに、USB PD(Power Delivery)に対応した電源管理機能も備えており、ドッキングステーションやeGPUボックス、外部ストレージなどの用途にも対応可能だ。
また、PCIeのレーン構成を柔軟に変更可能で、以下の組み合わせに対応する。
- PCIe 4.0 x4:1ポート
- PCIe 4.0 x2:2ポート
- PCIe 4.0 x1:4ポート
- PCIe 4.0 x1:2ポート+PCIe 4.0 x2:1ポート
合計帯域はPCIe 4.0 x4の64Gbpsまでだが、USB4の仕様により40Gbpsが上限となる。これによってたとえばeGPUボックス(外付けビデオカード)のような単一デバイス向けはもちろん、SSD+LANといった複合デバイスも開発できるようになるだろう。
ちなみに搭載製品は既に市場に出回っており、先日PC Watchでもレビューしている。
PCIe 4.0 Packet Switch ASM58048
続いて、PCIe 4.0に対応したパケットスイッチだ。TSMC 28nmプロセスで製造される。
PCIeの帯域不足が課題とされる中、常時フル帯域を使用するケースは少ない。このパケットスイッチを活用することで、1つのPCIeポートの帯域を複数のデバイスで効率的に共有できる。LANハブやUSBハブのPCIe版と考えれば分かりやすい。
今回展示されていたASM58048は、合計48レーン品となる。デモでは以下の構成で、合計48レーンを最大限活用していた。
- 上り16レーン:ホストとの接続
- 下り16レーン:NVIDIA RTX A4500(ビデオカード)
- 下り16レーン:High Point製NVMe SSD RAIDコントローラ
Stream Deckの“モジュールだけ”を展示したElgato(コルセア)
コルセアの子会社であるElgatoでは、看板商品のStream Deckに対応した新モデルが展示されていた。
Stream Deck MODULE
Stream Deckの「モジュールだけ」のモデルだ。
特に海外のユーザーからドライビングシミュレーター向けのカスタムボタンが作りたい要望が多く製品化に至ったという。
自作システムに組み込むのはもちろんのこと、Stream Deck MODULEを組み込んで再販することも可能とのことだ。
もちろんCADデータも公開されるため、購入前に自分の環境に合うか確認してから購入することもできる。
新型SSDやmicroSDカードを展示したKIOXIA
キオクシアでは、開発中の新型ハイエンドSSDと定番商品のmicroSDカードの新モデルが展示されていた。
EXCERIA PRO G2
EXCERIA PRO G2は、PCIe 5.0に対応したハイエンドSSDだ。コントローラは非公開だが、同社の過去製品から推測されるPhison製の新型コントローラ「PS5028-E28」が採用されている可能性が高い。
EXCERIA G3
キオクシアの定番microSDカードの第3世代モデル「EXCERIA G3」シリーズが開発中だ。ベースモデルのEXCERIA G3は読み込み速度が向上し、上位モデルのEXCERIA PLUS G3は読み書き速度が向上している。
ただし、この速度を最大限に引き出すには、高速転送規格のUHS-I DDR225モードに対応したカードリーダが必要だ。キオクシアでは、UGREEN製カードリーダ「CM891」、「CM892」で性能を測定しており、2025年後半の発売を予定している。
項目 | EXCERIA PLUS G3 | EXCERIA G3 |
---|---|---|
容量 | 64/128/256/512GB/1TB | 64/128/256/512GB/1TB |
最大読込速度 | 225MB/s※(100MB/s @SDR104 mode) | 160MB/s※(100MB/s @ SDR104 mode) |
最大書込速度 | 150MB/s※(90MB/s @SDR104 mode) | 50MB/s *¹ |
スピードクラス | C10/U3/V30 | C10/U3/V30 |
アプリケーションパフォーマンスクラス | A2 | A2 |
注記:※1 UGREEN製カードリーダ(CM891/CM892)での測定値 |
注目のデュアルIntel B60の基板が拝めるMAXSUN
Intel Arc Pro B60 Dual 48G Turbo
Teclast傘下のMAXSUNのブースでは、Intelが会期中に発表したGPU「Intel Arc Pro B60」を2基搭載したビデオカード「Intel Arc Pro B60 Dual 48G Turbo」を分解した状態で展示している。
このカードのユニークな点は、PCIe x16スロットに対応しているものの、実際は2つのPCIe x8レーンが独立しており、それぞれのGPUがそれぞれレーンを介してPCと接続する点。カード上はスイッチが非搭載なので、BIOSがレーン分離をサポートしている必要がある。実際のカードでも、2つのGPU集版がほぼ同じパーツ配置であるのが確認できる。
メモリはそれぞれのGPUが24GBで、合計48GBを実現している。ビデオメモリはSamsungの16Gb GDDR6「K4ZAF325BC-SC20」だった。なお、映像出力はHDMIが2基、DisplayPortが2基だが、HDMIとDisplayPortが1セットずつそれぞれのGPUから出力する仕組みだ。
デュアルGPUだが、2スロットに収まるサイズで、シロッコファンやベイパーチャンバー。ヒートパイプを採用したクーラーを備えている。
コラボマウスも展開のNoctua
日本でも熱心なファンが多いNoctuaのブースでは、定番商品に加え、新型のコラボマウスやオールインワン水冷クーラーのプロトタイプが注目を集めていた。
また、昨年(2024年)に引き続き二相サーモサイフォンクーラーもアップデートされており、引き続き注目していきたい。
Pulsarコラボマウス
軽量マウスで知られるPulsar Feinmann F01に、Noctua製の小型ファン「NF-A4x10 5V PWM」を搭載したコラボモデルだ。
NF-A12x25 G2
3月の秋葉原イベントで「次世代120mmファン」として展示されたNF-A12x25 G2は、パッケージも完成し、2025年6月の発売を予定している。なお、「chromax.black version」は2026年の第1四半期に発売となる。
オールインワン水冷クーラー
これまで未参入だったオールインワン水冷クーラー市場にNoctuaが参入する。Asetek G8 V2ポンプユニットを採用し、カバー内に3層吸音フォームと同調質量ダンパー(TMD)を搭載することで、ポンプの動作音を軽減する。
同調質量ダンパー(TMD)は、台北の観光スポットとしても有名な台北101の球体こと「ウインドダンパー」と同じ原理で、振動とは逆方向に動く重りが揺れを打ち消す仕組みだ。
水冷クーラーの小さなポンプ空間に、音を軽減する三層吸音フォームと振動を抑えるTMDが一体となって組み込まれている。防音構造は柔らかい吸音材が音を吸収し、硬い層が低い音を遮断する仕組みになっている。この防音構造の一部がTMDの質量として機能し、振動を相殺している。この吸音材とダンパーによる振動制御により、通常のポンプと比べてノイズが平均5.7dB(A)低減され、より静かな動作を実現しているという。
発売は2026年の第1四半期とのことだ。
Phisonも発熱を抑えたPCIe 5.0対応SSDコントローラ投入
フラッシュメモリーのコントローラからストレージのOEM/ODMまで製品手がけるPhisonは、主に新型ハイエンドコントローラとなる「PS5028-E28」を中心に展示していた。
PS5028-E28
昨年はメインストリーム向けの「PS5031-E31T」を中心に展示していたが、今年はハイエンドのPS5028-E28が主役として展示された。PS5028-E28は、PCIe 5.0対応の初期コントローラとして採用されたPS5028-E26の後継製品だ。
PS5028-E26は発熱が課題だったが、PS5028-E28は製造プロセスをTSMC 12nmから6nmに微細化。これにより性能向上と発熱抑制を実現している。
特に競合となるSilicon Motion(SMI)の「SM2508」よりもランダムリード/ライトの性能が高いところを強調しており、今後の採用製品の実力に期待したいところだ。
3,300W電源を展示したSUPER FLOWER
PCの消費電力はどんどん増えているが、それを支える電源で最高用量はどれくらいなのだろうか?……ということで最大容量を調査したところ、最も高い容量の電源はSUPER FLOWERの「LEADEX PLATINUM ATX 3.1 SF-3300F14HP 3.1」で、3,300Wだった。
ハイエンドSSDコントローラを低発熱で成功したSilicon Motion、今度はメインストリーム向け
フラッシュメモリのコントローラを手がけているSilicon Motion(SMI)は昨年のハイエンド向けとなるSM2508に続き、今年はメインストリーム向けの「SM2504XT」を中心に展示をしていた。
SM2504XT
メインストリーム向けのSM2504XTは、上位モデルSM2508と比較して以下の仕様となる。
- NANDフラッシュ向けにPCIe 5.0 x4、4チャンネル(SM2508は8チャンネル)
- プロセッサ:ARM Cortex-R8 3コア(SM2508は4コア)
- DRAMサポート:なし(SM2508はDDR4/LPDDR4対応)
SM2504XT | SM2508 | |
---|---|---|
シーケンシャルリード | 11.0GB/s | 14.5GB/s |
シーケンシャルライト | 11.5GB/s | 14.6GB/s |
ランダムリード | 170万IOPS | 250万IOPS |
ランダムライト | 200万IOPS | 250万IOPS |
となり、性能こそ抑えられているが、PCIe 4.0のSSDよりは高速なこともありコストパフォーマンスの高い製品が期待できそうだ。SM2508に引き続き、TSMC 6nmプロセスを採用しており発熱は抑えられているという。
ライバルとしてはPhisonのPS5031-E31TやMaxioのMAP1802あたりだろう。
SM2324
「SM2324」は、USB4にネイティブ対応したポータブルSSD向けコントローラだ。
最大32TBに対応し、USB PD 3.1コントローラを内蔵している点が特徴だ。
Nintendo Switch2向けmicroSD Expressカードの展示
Nintendo Switch 2がmicroSD Expressを採用したことで、フラッシュストレージメーカーは対応を強調した展示を行なっていた。
ADATA
ADATAは256GBと512GBをラインナップしている。展示でもSwitch 2 READYをアピールしていた。
AGI
AGIは128GB、256GBをラインナップしている。日本ではAmazon等ECサイトで取り扱うとのこと。現時点でOCNオンラインショップやジョーシンなどで取り扱いを開始している(在庫はないようだが)。
Lexar
Lexarは256GB、512GB、そしてほかのメーカーではあまり見ない1TBのmicro SD Expressまでラインナップしている。とにかく容量が欲しい読者は狙い目と言えそうだ。
水冷ミニPCなどを展示したThermalright
Thermalrightといえばクーラーというイメージが強いが、今年のCOMPUTEXではひと味違った展示が目に付いた。
水冷ミニPC
特徴として、全モデルにミニディスプレイを搭載し、CPUの温度やクロックの表示が可能だ。バックグラウンドではGIFアニメや動画も再生できる。
ジム・ケラー氏率いるtenstorrentもブース出展
AMDのZenアーキテクチャを設計したジム・ケラーがCEOを務めるtenstorrentでは、AIプロセッサ「Wormhole」を搭載したPCIeカードを展示。さらに、開発中のRISC-V CPUチップレット「Athena」や低消費電力AIチップレット「Quasar」のロードマップを紹介していた。
チップレットなので、たとえばCPUとAIを組み合わせた構成を作りたい場合は、Athena+ Quasarをインターコネクトで接続しパッケージに統合するといったことが可能になるだろう。
RISC V CPUのAthenaについては「ジム・ケラーデザイン!」と強調していたのできっとすごい物が出てくると期待したいところだ。
Thermaltake、4面ディスプレイ搭載水冷クーラー
MINECUBE 360 Ultra ARGB Sync
「MINECUBE 360 Ultra ARGB Sync」は、4面液晶ディスプレイを搭載したファンを搭載したオールインワン水冷クーラーだ。
ディスプレイのサイズは3.95型で解像度は720×720ドットだ。
COMPUTEX TAIPEI 2025振り返り
アジア最大級のICT見本市であるCOMPUTEX TAIPEI 2025は、例年より早い5月20日~23日に開催され、アメリカ、韓国、日本、中国、インドを含む152カ国から86,512人の業界関係者が来場した。
昨年の来場者数は85,179人だったこともあり、同水準の来場者数だったと言えるだろう。
会場の状況だが、今年はホール1「TaiNEX 1」とホール2「TaiNEX 2」をフルで活用していたイメージがあり、今までのようにTaiNEX 1にいればだいたいOK!というわけにもいかず、何度も往復をすることになった。
筆者は2日目から参加したが、会期中は天気が良く、夜間を除き雨も少なく、快適に過ごせた。
今回、編集部より「コンパニオン撮ってきてよ」と無理難題を押しつけられたが、いわゆるコロナ後のCOMPUTEXにコンパニオンは「ほとんど居ない」のだ……。
その代わり、願い事を書いてコンピュータの隣に置いておくと縁起が良いとされるお菓子の乖乖(guai guai)の写真で我慢してほしい。会場ではCOMPUTEXとコラボしたパッケージもあり台湾人の乖乖への本気度が伺えた。
来年のCOMPUTEX TAIPEI 2026は6月開催に戻り、6月2日~5日の4日間開催予定だ。
会場は現在の南港展覧館のホール1/2に加え、久しぶりに台北世界貿易中心(TWTC)も会場に加わり、2会場制に戻ることになる。さらなるスケールアップが予想され、そもそも4日で回りきれるのか……?といった不安は正直あるが、来年は一体どんな進化があるのか楽しみで仕方ない。